最低賃金は、高校生にも65歳以上の人にも、パート・アルバイト・外国人にも同じ額が適用されます。年齢や学生かどうか、雇用形態で額は変わらず、例外として下げられるのは、会社が都道府県労働局長の許可を受けた場合だけです。この記事では、最低賃金法と厚生労働省の資料をもとに、人や働き方ごとの扱いを整理し、当サイトの最低賃金データベース(47都道府県・2002年度から)で、隣り合う県の最低賃金の差を確かめます。
| 働く人 | 最低賃金 | ポイント |
|---|---|---|
| 高校生・大学生 | 適用 | 年齢・学生かどうかで額は変わらない |
| パート・アルバイト・契約社員・嘱託 | 適用 | 雇用形態や呼び方は関係ない |
| 65歳以上 | 適用 | 定年後の再雇用でも同じ |
| 外国人(技能実習生を含む) | 適用 | 国籍は関係ない |
| 研修中・試用期間中 | 適用 | 下げられるのは労働局長の許可がある場合だけ |
| 派遣社員 | 適用 | 派遣先の事業場がある都道府県の額 |
| 業務委託・フリーランス | 原則なし | 実態が「労働者」なら適用される |
| 同居の親族だけで営む店の家族・家事使用人 | 対象外 | 最低賃金法の「労働者」から除かれている |
厚生労働省は、地域別最低賃金は都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用され、パートタイマー・アルバイト・臨時・嘱託などの雇用形態や呼び方は関係ないと案内しています。年齢による区別もないので、高校生のアルバイトにも大人と同じ額が適用されます。「高校生だから時給は安い」という決め方で最低賃金を下回ると、その部分は無効になり、最低賃金と同じ額を約束したものとみなされます(最低賃金法第4条)。
| 都道府県 | 最低賃金(時給) | 週3日×4時間 (1か月) | 夏休みなど 1日6時間×20日 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 1,280円 | 66,560円 | 153,600円 |
| 大阪 | 1,231円 | 64,012円 | 147,720円 |
| 愛知 | 1,195円 | 62,140円 | 143,400円 |
| 全国加重平均 | 1,177円 | 61,204円 | 141,240円 |
| 北海道 | 1,131円 | 58,812円 | 135,720円 |
| 福岡 | 1,114円 | 57,928円 | 133,680円 |
| 宮崎 | 1,085円 | 56,420円 | 130,200円 |
週3日・1日4時間のアルバイトなら、1か月のバイト代は東京で約6.7万円、宮崎で約5.6万円が最低ラインです。自分の時給が最低賃金を下回っていないかは、働いている店や会社がある都道府県の額と比べます。都道府県ごとの額と発効日は最低賃金データベースで確かめられます。
時給は大人と同じでも、18歳未満は働き方に労働基準法の制限があります。お店の都合で時間を延ばされたときに知っておきたい3つです。
厚生労働省「大学生・高校生等を対象とした労働条件セミナー 自習用動画1」(2023年1月公開)。大学生・高校生などに向けて、働くときの基本的なルールを説明する厚生労働省の労働条件セミナーの動画です。
| 場合 | 時給の下限 | 条件 |
|---|---|---|
| ふつうの研修・試用期間 | 1,280円 | 最低賃金そのもの。会社の判断だけでは下げられない |
| 減額特例の許可を受けた試用期間 | 1,024円 | 労働局長の許可が必要。減額は最大20% |
研修中や試用期間中でも、最低賃金は適用されます。会社の指示で受ける研修やマニュアルを覚える時間は、ふつうは労働時間にあたるので、その時間にも最低賃金以上の賃金が必要です。
例外は、会社が都道府県労働局長の「減額の特例」の許可を受けた場合だけです。試用期間中の人について減額できるのは最大20%で、東京なら時給1,024円が下限になります。許可は、本採用の人の賃金も最低賃金と同じくらいで、試用期間の賃金を低くする慣行があるなど、理由がある場合に限られます。「研修中は時給900円」と言われたら、許可を受けているかを会社に確かめましょう。
65歳以上の人にも、地域別最低賃金は同じ額が適用されます。年金を受け取っていても、定年後に再雇用された場合でも変わりません。混同しやすいのが、後で説明する業種別の「特定最低賃金」で、こちらは18歳未満と65歳以上の人を対象外にしていることが多いです。その場合も、地域別最低賃金は下回れません。
厚生労働省は、日本国内で働く限り、国籍を問わず労働基準法や最低賃金法が原則として適用されると案内しています。技能実習生も同じで、技能実習法では報酬を日本人と同等以上にするよう定めています。鹿児島労働局の資料では、技能実習生は特定最低賃金を除外できる「技能習得中の者」にあたらないとしています。
| 働き方 | 適用される最低賃金 | 根拠 |
|---|---|---|
| ふつうの勤め | 働く事業場(店・工場・事務所)がある都道府県。住所は関係ない | 最低賃金法 |
| 派遣 | 派遣先の事業場がある都道府県。派遣会社の所在地ではない | 最低賃金法第13条 |
| テレワーク(在宅勤務) | 所属する事業場がある都道府県。自宅のある県ではない | 厚生労働省・総務省のテレワーク総合ポータルQ&A |
| 出張 | 所属する事業場がある都道府県 | 東京労働局の資料 |
| 業務委託・請負 | 原則なし。指揮命令を受けて時間で働くなど、実態が労働者なら適用 | 労働基準法第9条の労働者にあたるかで判断 |
派遣社員には、派遣会社がどこにあっても、派遣先の事業場がある都道府県の最低賃金が適用されます(最低賃金法第13条)。東京の派遣会社から埼玉の工場に派遣されたら埼玉の額、その逆なら東京の額です。派遣先の業種に特定最低賃金があれば、そちらが適用されます(第18条)。
業務委託や請負の契約で働く人は、雇われている「労働者」ではないので、原則として最低賃金は適用されません。ただし、契約の名前ではなく働き方の実態で判断されます。仕事の進め方や時間を細かく指示され、断る自由がなく、報酬が働いた時間に応じて払われているような場合は、労働者にあたる可能性があります。労働基準監督署には、労働者にあたるか疑問がある人の相談窓口が設けられています。
当サイトのデータで、陸地で隣り合う都道府県の86組について、2026年度の最低賃金の差を計算しました。差がいちばん大きいのは東京(1,280円)と山梨(1,113円)の167円で、週40時間働くと月に約2.9万円の差になります。次いで神奈川と山梨の166円、大阪と和歌山の130円でした。山梨の新しい額の発効は2026年11月1日なので、10月中は前年度の1,052円との比較になり、東京との差は228円です。
最低賃金は働く場所で決まるので、山梨に住んで東京の店で働けば東京の額、埼玉に住んで東京の会社に通えば東京の額です。通える範囲に最低賃金の高い県がある人は、求人の時給を見るときの物差しになります。都道府県ごとの差の理由は最低賃金はなぜ都道府県で違う?でまとめています。
| 対象 | 減額できる上限の考え方 |
|---|---|
| 精神または身体の障害で、著しく労働能力が低い人 | 同じ仕事をする人との能率の差に応じた率 |
| 試の使用期間(試用期間)中の人 | 20% |
| 基礎的な技能を学ぶ認定職業訓練を受けている人 | 労働時間のうち訓練にあてる時間の割合 |
| 軽易な業務に従事する人 | ほかの人の業務と比べた負担の軽さに応じた率 |
| 断続的労働に従事する人(待ち時間が多い仕事) | 待ち時間の40%にあたる割合 |
最低賃金を下回る額で雇えるのは、上の5つにあたる人について、会社が申請書を労働基準監督署を通して都道府県労働局長に出し、許可を受けた場合だけです。会社が「研修中だから」「仕事が簡単だから」と自分で決めて下げることはできません。減額できる率にも上限があり、試用期間なら最大20%です。
そもそも最低賃金法の対象外になっているのは、同居の親族だけで営む店や事業で働く家族と、家事使用人(家庭に直接雇われて家事をする人)です(最低賃金法第2条)。家族経営の店でも、親族以外の人を1人でも雇っていれば、その人には最低賃金が適用されます。
| 項目 | 地域別最低賃金 | 特定最低賃金(業種別) |
|---|---|---|
| 対象 | 都道府県内で働くすべての人 | 鉄鋼業・自動車小売業など特定の産業の基幹的な労働者 |
| 数 | 47都道府県に1つずつ | 223件・適用労働者 約301万人(2026年4月1日時点) |
| 18歳未満・65歳以上 | 適用 | 多くの場合は対象外(地域別が適用) |
| 両方にあたるとき | 高い方が適用される(最低賃金法第6条) | |
| 下回ったときの罰則 | 50万円以下の罰金(最低賃金法) | 30万円以下の罰金(労働基準法の賃金全額払い違反) |
業種別の最低賃金は「特定最低賃金」と呼ばれ、2026年4月1日時点で全国に223件あります。対象は、その産業の中心になって働く人で、18歳未満・65歳以上、雇われて間もない技能習得中の人、清掃など軽易な業務の人は対象外にされることが多いです(範囲は特定最低賃金ごとに違います)。対象外の人には地域別最低賃金が適用されるので、高校生が特定最低賃金の業種で働いても、地域別の額は下回れません。
地域別最低賃金が毎年大きく上がった結果、地域別より低くなっている特定最低賃金もあります。その場合は高い方の地域別最低賃金が適用されます。自分の業種に特定最低賃金があるかは、厚生労働省の最低賃金特設サイトの「最低賃金適用額早見表」で調べられます。
A. 働いている都道府県の最低賃金を下回っていれば、減額の特例の許可がない限り違法です。下回った部分は無効になり、最低賃金との差額を請求できます。まずはお店に確かめ、解決しなければ労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。手順は最低賃金を下回るとどうなる?でまとめています。
A. 中学生は原則として働けません。労働基準法は、15歳になった後の最初の3月31日(中学校を卒業する年度の終わり)までは働かせることを禁止しています。新聞配達などの軽い仕事を労働基準監督署長の許可を受けて行う場合などに限って、13歳以上で例外があります。
A. 同居の親族だけで営んでいる店で働く家族は、最低賃金法の対象外です。親族以外の従業員がいる店で、ほかの従業員と同じように指示を受けて働き、賃金をもらっている場合は、家族でも労働者として扱われることがあります。
A. 働く事業場(店・工場・事務所)がある都道府県の額で比べます。在宅勤務なら所属する事業場、派遣なら派遣先がある都道府県です。月給で働いている人の確かめ方は最低賃金の月給・年収・手取りはいくら?で計算例を紹介しています。
A. 新しい最低賃金は、都道府県ごとに決まった発効日以降に働いた分から適用されます。2026年度は10月1日から12月2日まで県によって違います。詳しくは最低賃金が上がったのに時給が上がらない理由は?をご覧ください。
自分の都道府県の最低賃金と発効日は最低賃金データベースで、最低賃金がこれまでどう上がってきたかは最低賃金の推移は?の記事で確かめられます。
この記事の情報は2026年10月9日時点のものです。主な出典: 最低賃金法・同施行規則、労働基準法、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」「特定最低賃金について」「最低賃金の減額の特例許可制度」、厚生労働省 最低賃金特設サイト、テレワーク総合ポータルサイト、鹿児島労働局・東京労働局の資料(最低賃金の額は当サイトで集計)。個別の事情で扱いが変わることがあります。具体的な判断は勤め先や労働基準監督署・都道府県労働局に確かめてください。