最低賃金(全国加重平均・時給)は、30年前の1996年度が623円、10年前の2016年度が823円で、2026年度は1,177円です。30年で約1.9倍になり、とくに2016年度からの10年で354円上がりました。この記事では、厚生労働省の資料と当サイトの最低賃金データベースから1978年度以降の推移をまとめ、物価で直した額や毎年の引き上げ額から、上がり方がいつ変わったのかを確かめます。
最低賃金の全国平均(働く人の数で重みをつけた全国加重平均)は、ランク別の目安の仕組みが始まった1978年度に315円でした。1990年度に初めて500円台、1995年度に600円台に乗り、2023年度に初めて1,000円を超えました。2026年度は1,177円で、1978年度の約3.7倍です。
グラフを見ると、上がり方は一定ではありません。2000年代の前半はほとんど横ばいで、2010年代の後半から角度が急になっています。なお、最低賃金は2002年度から時間額での表示に一本化されました。それより前は1日あたりの額(日額)が基本で、時間額は参考の値です。
| 年度 | 最低賃金 | 2026年度との差 | 2026年度は何倍 | 2025年の物価に直すと |
|---|---|---|---|---|
| 1978年度(48年前) | 315円 | +862円 | 3.74倍 | 538円 |
| 1986年度(40年前) | 451円 | +726円 | 2.61倍 | 599円 |
| 1996年度(30年前) | 623円 | +554円 | 1.89倍 | 727円 |
| 2006年度(20年前) | 673円 | +504円 | 1.75倍 | 789円 |
| 2016年度(10年前) | 823円 | +354円 | 1.43倍 | 939円 |
| 2025年度 | 1,121円 | +56円 | 1.05倍 | 1,121円 |
30年前の1996年度の最低賃金は623円で、2026年度はその約1.9倍です。ただ、1996年度から2006年度までの10年間は673円へ50円しか上がっていません。2006年度から2016年度は150円、2016年度から2026年度は354円と、新しい10年ほど上げ幅が大きくなっています。
「昔は時給500円くらいだった」という話は、全国平均で見ると1990年度(516円)前後に当たります。地域によって差があるので、東京など高い地域ではもう少し高く、低い地域ではもう少し低い額でした。都道府県ごとの2002年度からの推移は、最低賃金データベースの都道府県のページで見られます。
物価も上がっているので、金額だけで比べると上がり方を大きく見てしまいます。そこで、総務省の消費者物価指数を使い、当時の最低賃金を2025年の物価の水準に直しました。1996年度の623円は約727円、2016年度の823円は約939円に当たります。
2025年度の1,121円と比べると、物価を考えても30年前より約1.5倍、10年前より約2割上がった計算です。1996年から2016年までは物価がほとんど動かなかったため、この20年の物価の上昇は約2%でしたが、2016年から2025年の9年で約14%上がっています。
当サイトのデータベースで毎年の引き上げ額を並べると、上がり方の変化がはっきり見えます。1979〜1988年度と1990年代は、平均で年16円ほどずつ上がっていました。ところが2000年代は平均年6円で、1999〜2006年度は毎年5円以下、2002年度は引き上げがありませんでした。
2016年度からは年25円前後の引き上げが続き、新型コロナの影響があった2020年度は1円にとどまりました。その後は2023年度43円、2024年度51円、2025年度は過去最大の66円、2026年度は2番目に大きい56円です。2020年度以降の7年の平均は年39円で、1980〜1990年代の2倍以上の速さで上がっています。
| 期間 | 1年あたりの引き上げ額の平均 |
|---|---|
| 1979〜1988年度 | 約16円 |
| 1990〜1999年度 | 約16円 |
| 2000〜2009年度 | 約6円 |
| 2010〜2019年度 | 約19円 |
| 2020〜2026年度 | 約39円 |
1年で56円上がると、週40時間(月約173時間)働く人の月給は約9,700円増えます。年にすると約11.6万円で、毎年の数十円の差が暮らしの中では大きな違いになります。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1959年 | 最低賃金法ができる(4月15日公布)。当初は業者どうしの協定をもとにした方式が中心 |
| 1968年 | 法改正で業者間協定の方式をやめ、審議会で決める方式に |
| 1975年度 | 47都道府県すべてで地域別最低賃金がそろう |
| 1978年度 | 中央最低賃金審議会がランクごとに引き上げの「目安」を示す仕組みが始まる |
| 2002年度 | 日額をやめ、時間額での表示に一本化 |
| 2008年 | 改正最低賃金法の施行(7月1日)。生活保護との整合性への配慮が法律に入る |
| 2014年度 | 改正法の施行後はじめて、すべての都道府県で生活保護との逆転が解消される見込みに |
| 2023年度 | 全国加重平均が初めて1,000円を超える(1,004円) |
日本の最低賃金の法律は1959年にできました。いまの「都道府県ごとの最低賃金(地域別最低賃金)」が47都道府県すべてにそろったのは1975年度で、1978年度からは、国の中央最低賃金審議会が毎年夏に引き上げの目安を示す仕組みになりました。
2008年に施行された改正法では、最低賃金を決めるときに生活保護との整合性に配慮することが書き込まれました。最低賃金で働いた手取りが生活保護の水準を下回る「逆転現象」が問題になっていたためで、2014年度にすべての都道府県で解消される見込みになりました。
| 考えること | 2026年度の審議で示された主な材料 |
|---|---|
| 働く人の生計費 | 消費者物価は上昇が続く。2025年度の物価は前年度より2.6%上昇 |
| 働く人の賃金 | 2026年の春闘(連合の最終集計)は賃上げ率5.01%、中小企業は4.69% |
| 会社の支払い能力 | 企業の利益は改善傾向。一方で原材料などのコストの上昇もある |
最低賃金法第9条は、最低賃金を働く人の生計費・働く人の賃金・会社の支払い能力の3つを考えて決めるよう定めています。物価が上がれば生活に必要なお金が増え、春闘などで賃金が上がれば、それに合わせて下限も引き上げる、という考え方です。
2022年からは物価の上昇が続き、春闘の賃上げ率も2024年から3年続けて5%台になりました。これに加えて、政府が全国平均1,500円という目標を掲げて引き上げを後押ししてきたことも、上げ幅が大きくなった背景です。
| 時期 | 目標 |
|---|---|
| 2010年6月 | 2020年までに全国平均1,000円をめざす(雇用戦略対話の合意)。実際に超えたのは2023年度 |
| 2023年8月 | 2030年代半ばまでに全国加重平均1,500円をめざす(岸田首相) |
| 2024年10月 | 2020年代に全国平均1,500円(石破首相の所信表明、骨太の方針2025) |
| 2026年7月 | 遅くとも2030年代前半のできる限り早い時期に全国平均1,500円を達成(骨太の方針2026) |
政府は2026年7月21日に閣議決定した骨太の方針で、全国平均1,500円の達成時期を「遅くとも2030年代前半できる限り早期に」としました。それまでの「2020年代に1,500円」から、期限を事実上うしろにずらした形です。
ANNnewsCH「日本成長戦略まとまる 370兆円官民投資が柱 2030年代前半に最低賃金1500円達成へ(2026年7月1日)」(2026年7月公開)。政府の日本成長戦略で、最低賃金1,500円の達成時期を2030年代前半とする方針がまとまったことを伝えるニュースです。
| 前提 | 届く年度 | 1年あたりに必要な上げ幅 |
|---|---|---|
| 2029年度に届く(「2020年代」の最後) | 2029年度 | 約108円(年8.4%) |
| 2034年度に届く(「2030年代前半」の最後と仮定) | 2034年度 | 約40円(年3.1%) |
| 2026年度と同じ56円ずつ上がった場合 | 2032年度 | 56円 |
| 毎年5%ずつ上がった場合 | 2031年度 | 59〜71円 |
1,500円まではあと323円(約27%)です。「2020年代」の最後の2029年度に届くには毎年約108円、2034年度なら毎年約40円の引き上げが必要になります。2026年度と同じ56円ずつ上がった場合は、2032年度に1,500円を超える計算です。
ただし、毎年の引き上げ額は中央・地方の審議会で、物価や賃金、会社の状況をもとにそのつど決まります。日本商工会議所などは2026年4月に目標の見直しを求めていて、2027年度以降の額は決まっていません。この表は予想ではなく、仮の条件で計算したものです。
A. 全国加重平均で1996年度は623円、1999年度は654円で、2026年度の1,177円の5割台です。ただし物価も違うので、2025年の物価に直すと1996年度は約727円になります。
A. 金額では2025年度の66円が過去最大で、2026年度の56円が2番目です。引き上げ率では1980年度(時間額で6.9%)が最も高く、2025年度は6.3%でした。
A. 2027年度の額は、2027年の夏に中央最低賃金審議会が目安を示し、各都道府県の審議会が決めます。2026年10月の時点では決まっていません。決まった額は最低賃金データベースに反映します。
A. 同じ時期に物価も上がっているためです。物価と給料の関係は値上げばかりで生活できない?給料が追いつかない理由で、最低賃金で働いたときの手取りは最低賃金の月給・年収・手取りはいくら?でまとめています。
都道府県ごとの推移は最低賃金データベースで、都道府県の差の移り変わりは2026年度の最低賃金、東京と宮崎の差は195円の記事で確かめられます。
この記事の情報は2026年10月8日時点のものです。主な出典: 厚生労働省「最低賃金(全国加重平均)の引上げ額と引上げ率の推移」「地域別最低賃金の全国一覧」「地域別最低賃金と目安制度」、最低賃金法、総務省「消費者物価指数」、内閣府「経済財政運営と改革の基本方針」、連合の春闘集計、労働政策研究・研修機構の資料。将来の最低賃金の額を予想するものではありません。