値上げばかりで生活が苦しいと感じるのは、数字の上でも自然なことです。総務省の消費者物価指数を当サイトで集計すると、食料の物価は2021年8月からの5年で30.7%上がりました。厚生労働省の統計では、物価の上がり方を差し引いた実質賃金が2022〜2025年の4年続けてマイナスでした。この記事では、給料と値段の差を数字で確かめ、家計でできる対策と、困ったときの相談先をまとめます。
| 指標 | 数字 | 意味 |
|---|---|---|
| 食料の物価 | +30.7% | 2021年8月→2026年8月。1万円の食べ物が約13,070円に |
| 物価全体(総合) | +14.7% | 同じ期間。60か月連続で前の年を上回った |
| 最低賃金(全国平均) | +26.6% | 2021年度930円→2026年度1,177円 |
| 実質賃金 | 4年連続マイナス | 2022〜2025年。2025年は前年比−1.3% |
| エンゲル係数 | 28.6% | 2025年の年平均。生活費に占める食費の割合が2000年以降で最も高い |
生活の実感にいちばん近いのは、毎日買う食べ物の値段です。食料の物価は5年で30.7%上がり、物価全体(14.7%)の約2倍のペースでした。生活費に占める食費の割合を示すエンゲル係数も、二人以上の世帯の2025年の年平均で28.6%と、2000年以降で最も高くなっています。
収入の側では、物価の上がり方を差し引いた実質賃金が、2022年から2025年まで4年続けて前の年を下回りました。給料の額が増えても、それ以上に値段が上がっていたということです。「値上げばかりで生活できない」と感じるのは、多くの家庭に共通する状況といえます。
| 統計 | 数字 | 中身 |
|---|---|---|
| 実質賃金(2024年) | −0.3% | 物価の上がり方を差し引いた給料の前年比 |
| 実質賃金(2025年) | −1.3% | 名目(額面)は+2.3%でも、物価の上昇に届かず4年連続マイナス |
| 実質賃金(2026年7月) | +2.4% | 7か月連続のプラス。額面の給与総額は+4.7% |
| 春闘の賃上げ率(2026年) | 5.01% | 連合の最終集計。3年連続で5%台。300人未満の組合は4.69% |
| パートの時給(2026年7月) | 1,460円 | 1年前より5.7%増 |
賃金の統計を見ると、2022〜2025年は、額面の給料が増えても物価の上がり方に追いつかない状態が続きました。2025年は額面が+2.3%増えたのに、実質賃金は−1.3%でした。
2026年に入ると流れが変わり、実質賃金は2026年7月まで7か月連続でプラスになりました。7月は額面の給与総額が+4.7%増え、実質でも+2.4%です。春闘の賃上げ率も3年続けて5%台でした。ただし、4年分のマイナスを取り戻すには、プラスがしばらく続く必要があります。
理由はいくつか考えられます。1つは、平均の数字と自分の給料の違いです。春闘の5%台は労働組合のある企業の集計で、300人未満の組合では4.69%でした。年金で暮らす人や、給料が据え置きの人には、賃上げの恩恵が届きません。
もう1つは、よく買う物ほど値上がりが大きいことです。実質賃金の計算に使う物価は、家賃や通信費なども含めた全体の平均です。毎日買う食べ物は物価全体の約2倍のペースで上がったため、スーパーのレジで感じる負担は、平均の数字より重くなります。
最低賃金の全国平均は、2021年度の930円から2026年度は1,177円へ、5年で26.6%上がりました。物価全体(14.7%)は大きく上回っていますが、食料の物価(30.7%)にはわずかに届いていません。時給で働く人にとって、給料の上がり方は物価全体より早くても、食べ物の値上がりには追いついていない計算です。
2021年を100として年ごとに並べると、2022年から2026年まで、食料の物価はどの年も最低賃金を上回っていました。最低賃金は2025年度に66円、2026年度に56円と大きく上がり、差は2025年の6.2ポイントから2026年は4.1ポイントに縮まっています。最低賃金で月173時間働いたときの月収の目安は、2021年度の約16.1万円から、2026年度は約20.4万円になります。
| 年 | 食費(月平均) | エンゲル係数 |
|---|---|---|
| 2021年 | 75,761円 | 27.2% |
| 2025年 | 89,754円 | 28.6% |
| 2021年と同じ量を2025年の値段で買うと | 約95,300円 | — |
二人以上の世帯の食費は、2021年の月平均75,761円から、2025年は89,754円へ、月約14,000円増えました。年にすると約17万円の増加です。
ただ、食料の物価は同じ期間に25.8%上がっています。2021年と同じ量を2025年の値段で買うと、月約95,300円かかる計算です。実際の食費はそれより約5,500円少なく、各家庭が買う量や品物を約6%減らして値上げを吸収してきたことがうかがえます。安い品物への切り替えや、外食を減らすといった工夫が、家計調査の数字にも表れています。
節約は、毎日の我慢より、一度決めれば毎月効く固定費から始めるのが効果的です。食費は、量を減らすより、値上がりの小さい品目に切り替える方が続けやすくなります。どの品目がどれだけ上がったかは、当サイトの値上がり品目ランキングで確かめられます。
2026年度の最低賃金は、都道府県ごとに2026年10月1日から12月2日にかけて順に上がります。自分の時給が新しい最低賃金を下回っていないかは、最低賃金データベースで都道府県ごとに確かめられます。
値上げの予定は、メーカーの発表や報道で1〜2か月前に分かることが多くあります。買い置きするなら、トイレットペーパー・洗剤・ティッシュのように傷みにくく、必ず使う日用品が向いています。食品は賞味期限のうちに食べ切れる量にとどめましょう。置き場所に困るほど買うと、使い切れずにかえって損になることもあります。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 自立相談支援機関 (市区町村など) | 生活困窮者自立支援制度の窓口。仕事・住まい・家計の困りごとをまとめて相談でき、家賃にあたる額の給付(住居確保給付金)などにつないでもらえる |
| 社会福祉協議会 | 生活福祉資金貸付制度の申し込み窓口(市区町村の社会福祉協議会) |
| ハローワーク | 仕事探し、職業訓練、失業したときの給付 |
| 市区町村の窓口 | 自治体ごとの給付や支援、生活保護の相談 |
家賃や光熱費の支払いが難しくなりそうなときは、払えなくなる前に相談するのが大切です。厚生労働省は、生活に困りごとがあるときは、まず住んでいる地域の自立相談支援機関に相談するよう案内しています。支援員が話を聞き、どんな支援が必要かを一緒に考え、計画をつくって支えてくれます。
一時的にお金が足りないときは、市区町村の社会福祉協議会が窓口の生活福祉資金貸付制度もあります。電気やガスの料金は、支払いが遅れる前に契約している会社に相談すると、支払い方法を案内してもらえることがあります。
A. 額面の給料(名目賃金)から、物価の上がり方を差し引いたものです。給料が3%増えても物価が4%上がれば、実質賃金は約1%のマイナスで、買える物の量は減ったことになります。
A. 厚生労働省の毎月勤労統計では、実質賃金は2026年7月まで7か月連続でプラスでした。ただ、2022〜2025年の4年分のマイナスがあるため、2021年と比べて買える量が元に戻ったとまではいえません。
A. 2021年からの5年では、コーヒー豆・チョコレート・お米などの上がり方が大きくなっています。品目ごとの5年の値上がりは物価576品目の5年の値上がりで詳しく見ています。
A. 終わりの時期は誰にも言い切れません。日本銀行の見通しや、値上げ品目数の推移は値上げはいつまで続く?で整理しています。
費目ごとの家計の平均は家計簿の平均、都道府県ごとの最低賃金は最低賃金データベースで確かめられます。
この記事の情報は2026年10月5日時点のものです。主な出典: 総務省統計局「消費者物価指数」(2025年基準・全国)・「家計調査」(二人以上の世帯)、厚生労働省「毎月勤労統計調査」(2025年分結果確報、2026年7月分結果速報)・「生活困窮者自立支援制度」・「生活福祉資金貸付制度」、日本労働組合総連合会「2026春季生活闘争 最終回答集計」、当サイト「最低賃金データベース」。物価や賃金の先行きを予想したり、特定の商品の購入や金融商品をすすめたりするものではありません。