最低賃金が上がったのに時給が上がらない主な理由は、①まだ発効日(新しい額が使われ始める日)が来ていない、②給料に入っているのが発効日より前に働いた分、③時給がもともと新しい最低賃金以上なので会社に引き上げの義務がない、の3つです。2026年度の最低賃金は、都道府県ごとに10月1日から12月2日までの間に順に上がります。この記事では、厚生労働省の資料と最低賃金法をもとに理由を整理し、当サイトの最低賃金データベースから47都道府県の発効日と、その移り変わりを確かめます。
| 理由 | よくある場面 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| ① 発効日がまだ | ニュースで「最低賃金が決まった」と見たが、自分の県はまだ上がっていない | 都道府県の発効日(s2の表) |
| ② 前の期間の給料 | 10月に受け取った給料が、9月に働いた分 | 給料の締め日と、働いた日 |
| ③ もともと最低賃金以上 | 時給が新しい最低賃金より高いので、会社が据え置いた | 自分の時給と新しい最低賃金を比べる |
①と②は、待てば給料に反映されるケースです。最低賃金は国が一斉に上げるのではなく、都道府県ごとに決めた発効日から使われます。また、新しい額が使われるのは発効日以降に働いた時間なので、10月1日に上がる県でも、9月に働いた分の給料は前の額のままで問題ありません。
③は、待っても上がらないことがあるケースです。最低賃金法が会社に求めているのは「最低賃金額以上の賃金を払う」ことで(第4条)、もともと高い時給の人まで上げるよう定めた条文はありません。東京商工リサーチが2025年10月に公表した企業への調査でも、回答した会社の43.2%が「新しい最低賃金より低い時給の従業員はおらず、給与は変更しない」と答えていました。
| 発効日 | 都道府県(新しい最低賃金) |
|---|---|
| 10月1日 | 東京1,280円・神奈川1,279円・大阪1,231円・埼玉1,196円・千葉1,195円・愛知1,195円・兵庫1,172円・三重1,143円・北海道1,131円・栃木1,125円・岐阜1,121円・富山1,119円・新潟1,108円・宮城1,098円・香川1,092円 |
| 10月2〜4日 | 長野1,117円・岡山1,104円(2日)/滋賀1,136円・群馬1,120円・石川1,113円・和歌山1,101円・鳥取1,090円(3日)/福岡1,114円・福井1,112円・奈良1,107円(4日) |
| 10月8〜18日 | 山口1,101円(8日)・島根1,092円(10日)・広島1,141円(11日)・秋田1,090円(14日)・静岡1,154円(15日)・福島1,094円(16日)・茨城1,136円(18日) |
| 10月24〜30日 | 宮崎1,085円(24日)・鹿児島1,090円(25日)・青森1,090円・高知1,086円(29日)・山形1,092円(30日) |
| 11月 | 山梨1,113円・徳島1,103円・大分1,096円・愛媛1,093円(1日)・長崎1,087円(2日)・佐賀1,095円(15日)・京都1,180円(16日) |
| 12月 | 熊本1,092円・岩手1,090円(1日)・沖縄1,086円(2日) |
2026年度の最低賃金は、全国の平均(働く人の数で重みをつけた全国加重平均)で1,177円になり、2025年度の1,121円から56円上がりました。いちばん高いのは東京の1,280円、いちばん低いのは宮崎の1,085円です。
発効日は、10月1日の15道府県から、12月2日の沖縄まで2か月ほどの幅があります。2026年10月8日の時点で新しい額になっているのは26都道府県で、残りの21県は10月10日から12月2日にかけて上がります。京都は11月16日、熊本・岩手は12月1日なので、10月の給料に反映されないのは当然です。
日テレNEWS「【最低賃金】今年度改定額 全国平均1177円 引き上げ額の全国平均は56円、過去2番目の高さ」(2026年9月公開)。2026年度の最低賃金の改定額が出そろったことを伝えるニュースです。
最低賃金は、国の中央最低賃金審議会が引き上げ額の「目安」を示し、それをもとに各都道府県の地方最低賃金審議会が金額を話し合って決めます。2026年度の目安は7月28日に示され、そこから各地の審議会が順に答申(審議会としての結論)を出しました。
答申のあとは、働く人や会社が15日以内に異議を申し出られる期間があり、その後に労働局長が決定して公示します。最低賃金法第14条では、新しい額は公示から30日を過ぎた日に効力が出ますが、決定でそれより後の日を指定することもできます。審議の進み具合と、この「後の日を指定できる」仕組みの2つで、県ごとに発効日がずれます。
| 働いた期間 | 使う最低賃金 | 受け取る給料 |
|---|---|---|
| 9月21日〜9月30日 | 1,226円(前の額) | 11月10日の給料 |
| 10月1日〜10月20日 | 1,280円(新しい額) | |
| 8月21日〜9月20日 | 1,226円(前の額) | 10月10日の給料 |
新しい最低賃金を使うかどうかは、給料を受け取る日ではなく、働いた日で決まります。厚生労働省は、給料の計算期間の途中に発効日がある場合でも、発効日以降に働いた分は新しい最低賃金以上を払う必要があるとしています。「締め日の区切りがいいので来月から上げる」という扱いは認められません。
上の例では、10月10日に受け取る給料は9月20日までに働いた分なので、前の額のままです。新しい額が初めて入るのは11月10日の給料で、それも10月1日以降に働いた時間の分だけです。月末締め・翌月払いの職場なら、10月1日発効の県でも新しい額が入るのは11月に受け取る給料からになります。
| 働き方 | 最低賃金 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| パート・アルバイト(時給) | 適用される | 時給と最低賃金をそのまま比べる |
| 正社員(月給) | 適用される | 月給を1時間あたりに直して比べる |
| 契約社員・嘱託など | 適用される | 時給か、1時間あたりに直した額で比べる |
| 派遣社員 | 適用される | 派遣先の都道府県の最低賃金で比べる |
最低賃金は、パートやアルバイトだけでなく、正社員を含むすべての働く人に適用されます。厚生労働省は、雇用形態や呼び方に関係なく、事業場で働くすべての労働者に適用されると説明しています。「正社員は関係ない」というのは誤りです。
月給の人は、月給を1か月の平均の所定労働時間で割って、1時間あたりの額に直してから比べます。このとき、通勤手当や家族手当、残業代、ボーナスなどは月給から除きます(計算の手順は最低賃金の月給・年収・手取りはいくら?で解説しています)。最低賃金が大きく上がると、基本給が低めの若手の正社員が、新しい額を下回ることもあります。
最低賃金の改定で新人の時給が上がり、長く働く人との差が縮んでも、全員の時給が新しい最低賃金以上なら法律違反ではありません。最低賃金は「これより下は払ってはいけない」という下限のルールで、経験や役割による差の付け方は、それぞれの会社の賃金の決め方に任されています。
一方で、パートの時給そのものは上がっている職場が多くあります。連合の2026年春闘の最終集計では、労働組合がある職場のパートなどの時給の引き上げは平均75.01円(6.18%)で、最低賃金の上がり幅(全国加重平均で56円)を上回りました。ただし、これは労働組合のある会社だけの集計です。差が縮んだことに納得できないときは、昇給の仕組みや評価の基準を職場に確かめてみるのが第一歩です。
当サイトのデータベースで47都道府県の発効日を年度ごとに並べると、2018年度と2019年度は47都道府県すべてが10月7日までに新しい額になっていました。2024年度も、10月中に上がらなかったのは1県だけでした。
大きく変わったのが2025年度です。10月7日までに上がったのは11都道県だけで、11月が13県、12月が8県、翌年1〜3月が6県でした。秋田県は2026年3月31日の発効で、その1,031円が使われたのは、2026年度の新しい額(10月14日発効)までの約半年でした。2026年度は10月7日までが25都道府県に戻りましたが、12月の発効が3県あります。
| 年度 | いちばん早い発効日 | いちばん遅い発効日 | 10月中に上がった数 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 10月1日 | 10月6日 | 47 |
| 2024年度 | 10月1日 | 11月1日 | 46 |
| 2025年度 | 10月1日(栃木) | 翌年3月31日(秋田) | 20 |
| 2026年度 | 10月1日(15道府県) | 12月2日(沖縄) | 37 |
発効日が遅くなった背景として、厚生労働省の中央最低賃金審議会では、使用者側の委員から、会社が給与の仕組みを直す準備期間が要ることや、年の後半に時給が上がると扶養の範囲に収めるために働く時間を減らす人が出る(就業調整)ことが挙げられていました。日本経済新聞によると、厚生労働省は2026年6月、公示から30日を超えて発効日を決める場合は、地方の審議会で理由を示すよう求めています。
北海道ニュースUHB「「時給が上がるのはうれしいが…」北海道の最低賃金が初の“1100円台”時給56円アップで1131円に―所得税や社会保障費での働き控えで経営者からも不安の声」(2026年8月公開)。北海道の最低賃金の引き上げと、働き控えへの不安を伝えるニュースです。
発効日が1か月遅れるだけでも、働く人の受け取りは変わります。たとえば東京で時給が54円上がる場合、月に120時間働くパートなら1か月で6,480円の差です。自分の県の発効日は、最低賃金データベースの都道府県のページで確かめられます。
最低賃金を下回る時給で働く約束をしていても、その部分は無効になり、最低賃金と同じ額で約束したものとみなされます(最低賃金法第4条)。会社が最低賃金額以上を払わないと、50万円以下の罰金の対象になります(第40条)。厚生労働省は、気づかずに下回っていた場合も差額をすみやかに払う必要があるとしています。
ただし、ここで比べるのは発効日以降に働いた分です。11月や12月に発効する県で、10月に働いた分が前の額でも違法ではありません。職場に聞きにくいときや、説明に納得できないときは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。
A. 時給が新しい最低賃金より低い人は、発効日から少なくとも最低賃金まで上がります。もともと新しい最低賃金以上の時給の人は、法律上は上げる義務がないので、上がるかどうかは会社の判断です。
A. できません。新しい最低賃金が使われるのは発効日以降に働いた分です。発効日より前に働いた分は、前の年度の最低賃金以上であれば問題ありません。
A. 派遣元の会社がある県ではなく、派遣先の事業場がある都道府県の額です(最低賃金法第13条)。東京の会社から埼玉の工場に派遣されているなら、埼玉の最低賃金と比べます。発効日も派遣先の都道府県の日付です。
A. 最低賃金は法律で決まる下限なので、毎年の改定で必ず上がりますが、それより上の給料は会社ごとの賃上げで決まります。最低賃金の推移は最低賃金データベースで、物価と給料の関係は値上げばかりで生活できない?給料が追いつかない理由でまとめています。
A. 時給が上がると、同じ時間働いても年収が増えます。年の途中で上がると、年末に扶養の範囲(いわゆる年収の壁)を超えることもあるので、新しい時給で年収がいくらになるかを早めに計算しておくと安心です。
自分の県の金額・発効日・過去の推移は最低賃金データベースで、都道府県で額や発効日が違う仕組みは最低賃金はなぜ都道府県で違う?で確かめられます。
この記事の情報は2026年10月8日時点のものです。主な出典: 最低賃金法、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」「最低賃金特設サイト」、中央最低賃金審議会の資料、連合「2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果」(2026年7月3日)、東京商工リサーチ「2025年度最低賃金引き上げに関するアンケート」(2025年10月16日)、日本経済新聞の報道。個別の給与の扱いは勤務先の就業規則や契約によって異なります。具体的な判断は労働基準監督署などの公的な相談窓口に確かめてください。