最低賃金を下回る賃金の約束は、本人が合意していてもその部分が無効になり、最低賃金と同じ額を約束したものとみなされます。会社は差額を払う義務があり、地域別最低賃金を下回る賃金しか払わなければ50万円以下の罰金の対象です。この記事では、最低賃金法と厚生労働省・労働局の資料をもとに、違法になる場合とならない場合、差額をもらう手順と相談先を整理し、当サイトの最低賃金データベースで、改定後も前年度の時給のままだと月いくら足りないかを計算します。
| どうなる | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 約束が無効になる | 下回る部分は無効。最低賃金と同じ額を約束したとみなされる | 最低賃金法第4条第2項 |
| 差額を払う義務 | 会社は最低賃金との差額を払わなければならない。働く人は請求できる(時効3年) | 最低賃金法第4条、労働基準法第115条・第143条 |
| 罰金(地域別最低賃金) | 50万円以下の罰金 | 最低賃金法第40条 |
| 罰金(業種別の特定最低賃金) | 30万円以下の罰金(賃金の全額払い違反) | 労働基準法第24条・第120条 |
| 会社(法人)も罰せられる | 違反した担当者に加え、会社にも罰金 | 最低賃金法第42条 |
最低賃金法は、会社に最低賃金額以上の賃金を払うよう義務づけています。下回る額で契約していても、下回る部分は法律上なかったことになり、自動的に最低賃金の額で約束したものとして扱われます。厚生労働省は、下回っていた場合は不足分を請求でき、まずは会社に相談し、解決しなければ労働基準監督署に相談するよう案内しています。
通りません。最低賃金法の決まりは、当事者が合意しても変えられない強行規定です。「研修中だから」「仕事を覚えるまで」「本人が希望したから」と合意書にサインしていても、最低賃金を下回る部分は無効で、差額を払う義務は残ります。例外は、会社が都道府県労働局長の許可を受けた「減額の特例」だけです(次の節)。
労働基準監督署は毎年1〜3月に、最低賃金が守られているかを重点的に調べています。労働新聞の報道(2025年9月)によると、2025年1〜3月の監督指導で最低賃金の支払い義務違反が見つかった事業場の割合は全国で10.0%、東京労働局の管内では15.7%でした。滋賀労働局の発表では、344事業場のうち26事業場(7.6%)で違反が見つかっています。東京労働局は、月給制の人を時間あたりに直すと最低賃金を下回る例が目立つとして、「月給20万円を超えているから大丈夫」と思わずに確かめるよう呼びかけています。
| 場合 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 時給が最低賃金より低い | 違法 | そのまま下回っている |
| 月給を時間あたりに直すと低い | 違法 | 月給制にも適用される |
| 固定残業代を除くと低い | 違法 | 残業代は比べる賃金に入れない |
| 研修中・試用期間だからと低い | 違法 | 許可がなければ下げられない |
| 発効日の後も前年度の時給のまま | 違法 | 発効日以降に働いた分は新しい額 |
| 歩合給で、時間あたりにすると低い | 違法 | 歩合給の合計÷働いた時間で比べる |
| 手取りを時間で割ると低い | 違法でない | 税金・社会保険料を引く前の額で比べる |
| 発効日より前に働いた分が前年度の額 | 違法でない | 発効日前は前年度の額が基準 |
| 労働局長の「減額の特例」の許可がある | 違法でない | 許可された額(試用期間は最大20%減)まで |
| 実態も業務委託で、労働者でない | 対象外 | 最低賃金は労働者に適用される |
いちばん多い勘違いは、手取りで比べてしまうことです。最低賃金と比べるのは、税金や社会保険料を引く前の額から、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・残業代・ボーナスを除いたものです。月給の人の計算方法は最低賃金の月給・年収・手取りはいくら?で例を挙げて説明しています。
最低賃金を下回ってもよいのは、会社が都道府県労働局長の許可を受けた減額の特例(障害で著しく労働能力が低い人・試用期間中の人・認定職業訓練中の人・軽易な業務・断続的労働の5つ)の場合だけです。高校生や65歳以上、外国人、パートでも額は変わりません。誰に適用されるかは最低賃金は高校生にも適用?でまとめています。
最低賃金ちょうどの時給で働いている人は、新しい最低賃金の発効日を過ぎても時給が変わらなければ、その時点で最低賃金を下回ります。当サイトのデータで2026年度の引き上げ額を47都道府県で数えると、54円から65円で、いちばん多いのは56円の11道県でした。週20時間のパートなら、前年度の時給のままだと月4,680〜5,633円足りない計算です。
| 都道府県 | 前年度→2026年度 | 発効日 | 週20時間 1か月 | 週40時間 1か月 |
|---|---|---|---|---|
| 東京 | 1,226→1,280円 | 10月1日 | 4,680円 | 9,342円 |
| 大阪 | 1,177→1,231円 | 10月1日 | 4,680円 | 9,342円 |
| 愛知 | 1,140→1,195円 | 10月1日 | 4,767円 | 9,515円 |
| 北海道 | 1,075→1,131円 | 10月1日 | 4,853円 | 9,688円 |
| 宮城 | 1,038→1,098円 | 10月1日 | 5,200円 | 10,380円 |
| 福岡 | 1,057→1,114円 | 10月4日 | 4,940円 | 9,861円 |
| 広島 | 1,085→1,141円 | 10月11日 | 4,853円 | 9,688円 |
| 沖縄 | 1,023→1,086円 | 12月2日 | 5,460円 | 10,899円 |
| 佐賀 | 1,030→1,095円 | 11月15日 | 5,633円 | 11,245円 |
1か月の不足は数千円でも、気づかずに3か月続くと、東京の週20時間の人で約1.4万円になります。2026年10月9日時点で、2026年度の最低賃金がまだ発効していない県は21県あり、発効日は12月2日の沖縄まで続きます。自分の県の発効日は最低賃金データベースで、時給が上がる時期の考え方は最低賃金が上がったのに時給が上がらない理由は?で確かめられます。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 計算して確かめる:働く都道府県の最低賃金と、額面の時給(月給は所定労働時間で割る)を比べる |
| 2 | 記録を集める:給与明細、労働条件通知書・雇用契約書、シフト表、タイムカードや出退勤の記録(スマホのメモや写真でもよい) |
| 3 | 会社に差額を求める:計算の根拠を示して、口頭より文書やメールで |
| 4 | 労働基準監督署に相談・申告する:違反があれば、監督署が会社に是正を指導する |
| 5 | 期限に気をつける:賃金の請求は、支払日から3年で時効になる |
最低賃金法は、働く人が会社の違反を労働基準監督署などに申告できると定め、申告したことを理由に解雇などの不利益な扱いをすることを禁じています(第34条)。これに違反した会社には、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(第39条)。
差額の請求は、辞めた後でもできます。賃金の請求権の時効は労働基準法で、当分の間3年とされているので、それぞれの給料日から3年以内です。古い分から時効になるので、気づいたら早めに動くのが安心です。
| 窓口 | できること | 向いている人 |
|---|---|---|
| 労働基準監督署 | 違反の申告を受けて会社を調べ、是正を指導する | 違反が確かで、会社に直してほしい人 |
| 総合労働相談コーナー | 都道府県労働局や監督署の中にある。労働問題全般の相談を受け、必要に応じて窓口を案内 | 違反かどうか分からない人 |
| 労働条件相談ほっとライン 0120-811-610 | 厚生労働省の委託事業の無料電話相談。平日の夜と土日祝日に受け付け | 平日の昼に相談できない人 |
| 弁護士・法テラス | 会社との交渉や、労働審判・裁判で請求する | 金額が大きい・会社が払わない人 |
どこに行けばよいか迷ったら、まずは都道府県労働局の総合労働相談コーナーで相談すると、内容に合わせて監督署などを案内してもらえます。相談のときは、手順2で集めた給与明細や労働条件通知書を持っていくと話が早く進みます。多くの都道府県には、県や市が開いている労働相談の窓口もあります。
A. 労働基準監督署などへの申告を理由とした解雇や不利益な扱いは、最低賃金法第34条で禁止されています。それでも不安な場合は、会社に言う前に総合労働相談コーナーに相談して、進め方を一緒に考えてもらうのも方法です。
A. それぞれの給料日から3年以内の分です。たとえば2026年10月に請求するなら、2023年10月ごろより後に支払われた給料が対象になります。
A. 会社が倒産して賃金が払われないまま退職した場合は、国が未払い賃金の一部を立て替える「未払賃金立替払制度」があります。対象になるかは労働基準監督署に相談してください。
A. 法律が求めているのは最低賃金額以上を払うことだけなので、新しい最低賃金を上回っていれば違法ではありません。それより上げるかどうかは会社の判断です。詳しくは最低賃金が上がったのに時給が上がらない理由は?をご覧ください。
自分の都道府県の最低賃金と発効日は最低賃金データベースで、月給制の人の計算方法は最低賃金の月給・年収・手取りはいくら?で確かめられます。
この記事の情報は2026年10月9日時点のものです。主な出典: 最低賃金法・同施行規則、労働基準法、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」、厚生労働省 最低賃金特設サイト、大阪労働局「最低賃金の罰則」、滋賀労働局の監督指導結果、労働新聞(2025年9月26日)(最低賃金の額は当サイトで集計)。個別の事情で判断が変わることがあります。具体的な対応は労働基準監督署・都道府県労働局や弁護士に相談してください。