紅葉が赤くなるのは、秋に葉にたまった糖に日光が当たり、「アントシアニン」という赤い色素が新しく作られるためです。一方、黄色い葉は、緑の色素「クロロフィル」が分解されて、もとから葉にある黄色の色素「カロテノイド」が見えてきたものです。この記事では、農林水産省や大学の解説をもとに色が変わる仕組みを整理し、「最低気温が8度以下になると色づき始める」という目安を、気象台の35年分の観測(紅葉・黄葉データベース)で確かめます。
| 順番 | 葉の中で起きること |
|---|---|
| 1. 気温が下がる | 秋になって冷え込み、日が短くなる |
| 2. 離層ができる | 葉の付け根に「離層」というコルク栓のようなしきりができ、水や養分の通り道がふさがる |
| 3. 糖がたまる | 葉で作られた糖が枝へ運ばれず、葉の中にたまる。緑のクロロフィルは分解されていく |
| 4. 赤い色素ができる | たまった糖に日光(紫外線)が当たり、赤い色素アントシアニンが作られる |
農林水産省の広報誌『aff』によると、気温が低くなると、葉の付け根に離層と呼ばれるコルク栓のようなものができます。すると、葉で作られた糖分が枝へ移動しなくなり、葉の中の糖度が上がります。そこに日光が当たって化学反応が起き、赤い色素のアントシアニンが作られて、葉が赤く染まります。
ポイントは、赤い色素が「秋になってから新しく作られる」ことです。緑のクロロフィルが分解されていくのと入れ替わるように、赤い色素が増えていきます。京都府立植物園の樹木医も、ウェザーニュースの解説で、紅葉の赤は秋に葉にたまった糖類に紫外線が作用してできるアントシアニンによるもの、と説明しています。
| 色 | 色素 | 秋に新しく作られる? | 例 |
|---|---|---|---|
| 緑(夏) | クロロフィル(葉緑素) | -(秋に分解される) | 夏の葉 |
| 赤(紅葉) | アントシアニン | 作られる | イロハモミジ・ナナカマド |
| 黄(黄葉) | カロテノイド | 作られない(もとからある) | イチョウ・イタヤカエデ |
| 茶(褐葉) | タンニンなど | - | ブナ・コナラなどの終わりの色 |
葉には、もともと緑色のクロロフィルと、黄色のカロテノイドが含まれています。夏はクロロフィルが多いため、黄色は隠れて見えません。日が短くなり気温が下がるとクロロフィルが分解され、残ったカロテノイドの黄色が見えてくるのが黄葉です(農林水産省『aff』)。
つまり、黄色は「緑が消えて見えてきた色」、赤は「新しく作られた色」で、仕組みが違います。テストや問題集で見かける「紅葉の赤色は色素カロテノイドに由来する」という文は誤りで、赤はアントシアニン、黄色がカロテノイドです。茶色(褐葉)は、クロロフィルが分解されたあとに、褐色の色素タンニンが目立ってきたものと説明されています。
| 説 | 考え方 |
|---|---|
| 光から守る説(光防御説) | 赤い色素が日傘のように強い光をやわらげ、弱った葉が傷むのを防いで、養分を幹へ戻すのを助ける |
| 虫へのサイン説(共進化説) | 赤色は「防衛物質が多い・栄養が少ないので近づくな」というアブラムシなどへの警告のサイン |
葉を落とす前に、わざわざ材料を使って赤い色素を作るのはなぜか。これは研究者の間でもまだ答えが出ていない問題です。東京大学の樋口裕美子助教(生態学)は、主な仮説として2つを紹介しています。
1つは光から守る説です。クロロフィルが分解されて働きが落ちた葉に強い光が当たると、細胞が傷んだり早く落葉したりします。アントシアニンが光をやわらげることで、葉の養分を幹へ送り返す時間をかせいでいる、という考え方です。もう1つが虫へのサイン説で、秋に木に卵を産んで春に植物を傷めるアブラムシのような虫に、「食べても得がない」と知らせる警告の色だという説です。こちらは、支持する研究も否定する研究もあり、検証が続いているとされています。
| 条件 | 紅葉への影響 |
|---|---|
| 気温の低下(冷え込み) | 離層ができ、色づきが始まる・進む |
| 十分な日差し | たまった糖に光が当たり、赤い色素ができやすい |
| 日照不足 | 色がくすむ心配がある(2026年9月の日照不足について、ウェザーニューズが発色への影響を指摘) |
国土交通省 北陸地方整備局の大町ダム管理所の資料は、紅葉には十分な日射量と気温の低下が必要で、緑のクロロフィルの分解と赤い色素(アントシアン)ができることは、日射と低温の両方によって促されると考えられている、と説明しています。天気が良く、冷え込みが厳しい秋ほど、鮮やかな紅葉になりやすいということです。
MBS NEWS「【解説】美しい紅葉の条件“3要素+1”とは?気象予報士がテレビより少~し長く解説します!(2020年10月30日)」(2020年10月公開)。気象予報士が、美しい紅葉になる条件を解説したニュースです
気温の目安としてよく言われるのが、「最低気温が8℃以下になると紅葉が始まり、5〜6℃以下になると進んで見頃になる」というものです。同じ資料のほか、京都府立植物園の樹木医もウェザーニュースで「8℃以下で色づき始め、5℃以下で一気に進む」と紹介しています。ただしこの樹木医は、イロハモミジを対象にした目安で、8℃・5℃という明確なデータがあるわけではない、とも説明しています。そこで次の節で、実際の観測で確かめてみます。
気象台のある7都市で、1991〜2025年の毎年、秋に日最低気温が初めて8℃以下になった日・5℃以下になった日と、かえでの紅葉日(葉の大部分が赤くなった日)を並べました。
| 都市 | 初めて8℃以下 (平均) | 紅葉日 (平均) | 8℃以下になって から紅葉日まで | 紅葉日までに 5℃以下になった年 |
|---|---|---|---|---|
| 札幌 | 10月7日 | 10月29日 | 平均23日 | 33年中29年 |
| 仙台 | 10月21日 | 11月21日 | 平均32日 | 35年中35年 |
| 名古屋 | 11月6日 | 11月28日 | 平均22日 | 35年中32年 |
| 広島 | 11月5日 | 11月22日 | 平均17日 | 34年中20年 |
| 大阪 | 11月14日 | 12月1日 | 平均17日 | 35年中16年 |
| 福岡 | 11月15日 | 12月1日 | 平均17日 | 34年中13年 |
| 東京 | 11月15日 | 11月28日 | 平均13日 | 35年中9年 |
結果は、目安の前半「8℃」はよく当てはまっていました。7都市の241年分のうち237年分で、紅葉日は最低気温が初めて8℃以下になった日よりあとで、その間は都市によって平均13〜32日でした。8℃以下の冷え込みは、色づき始めの合図と考えてよさそうです。
一方、後半の「5℃以下で見頃」は都市によって違いました。仙台や名古屋ではほぼ毎年、紅葉日より前に5℃以下の日がありましたが、東京では35年中26年、5℃以下の日が来る前に紅葉日を迎えていました。大阪・福岡も半分以上の年が同じです。暖かい都市では、5℃まで冷えなくても、8℃前後の冷え込みが続けば色づき切ると言えます。
生活の目安に置き換えると、天気予報で最低気温8℃以下の朝が出てきたら、街なかのモミジの色づきまでは2〜4週間ほどです。地域ごとの例年の時期は紅葉の時期はいつ?の記事で、秋の暖かさで紅葉が遅れる傾向は紅葉が遅いのはなぜ?の記事で詳しく見ています。
A. 誤りです。紅葉の赤はアントシアニンという色素で、秋に葉にたまった糖から新しく作られます。カロテノイドは黄色の色素で、黄葉の色のもとです。
A. 赤くなるのが紅葉、黄色くなるのが黄葉です。紅葉は赤い色素が新しく作られ、黄葉は緑の色素が分解されて、もとからある黄色が見えてくる点が違います。気象庁も、かえでは「紅葉日」、いちょうは「黄葉日」として分けて観測しています。
A. 赤い色素は糖と日光から作られるため、よく日が当たる葉ほど赤くなりやすいと考えられます。北海道森林管理局も、同じ種類の木でも温度や光の当たり具合などの違いで、違う色に紅葉することがあると説明しています。
A. 冬も葉を残す常緑樹(スギ・マツ・クスノキ・ツバキなど)は紅葉しません。詳しくは紅葉しない木はどれ?の記事をどうぞ。
お住まいの近くの気象台の紅葉日は紅葉・黄葉データベースで確かめられます。秋の気温の記録は猛暑日・夏日の記録でも見られます。
この記事の情報は2026年10月15日時点のものです。主な出典: 農林水産省 広報誌『aff』2016年10月号、東京大学「秋にモミジが赤くなるのはなぜ?」(2022年)、ウェザーニュース「紅葉の不思議」(京都府立植物園 樹木医の解説)、国土交通省 北陸地方整備局 大町ダム管理所の記者発表資料(2014年)、北海道森林管理局の資料、気象庁の日別の気温と「生物季節観測」。気温と紅葉日の関係は当サイトの集計で、その年の紅葉の時期を予想するものではありません。