暖冬の主なデメリットは、春の野菜の値上がり、農作物の霜の害や病害虫、雪不足、冬物商品の売れ行き不振などで、メリットは暖房費が減ることです。当サイトの野菜の卸売価格ウォッチなどが集めている公的なデータで確かめると、暖冬の冬の冬野菜は前後の年の約87%と安い一方、次の春に2割以上高くなった年もありました。この記事では、野菜・暖房費・桜・インフルエンザへの影響を数字で確かめ、農業やお店への影響を公的機関の資料で整理します。
| 分野 | デメリット | メリット |
|---|---|---|
| 家計 | 冬に安かった野菜が、春に値上がりする年がある | 暖房に使う灯油・電気・ガスが減る(目安で6〜13%) |
| 野菜・農業 | 育ちすぎて値崩れする。生育が早まり、春の霜の害や病害虫が心配 | 冬の間は野菜がよく育ち、出回る量が増える |
| 雪・水 | スキー場の雪不足。雪どけ水が減り、春の農業用水が心配な地域も | 雪かきや雪による交通の乱れが減りやすい |
| お店・仕事 | 冬物衣料・暖房器具・鍋物などの売れ行きが落ちる。野菜の安値でスーパーの売上が伸びにくい | (目立ったメリットは少ない) |
| 自然・健康 | インフルエンザは暖冬でも流行する。桜は咲く時期がずれる | 桜は平均で1〜3日早く咲く(当サイトの7都市のデータ) |
暖冬は12〜2月の平均気温が平年より高い冬のことで、気温が高いと植物の育ち方や人の買い物の仕方が変わります。家計にとっては暖房費が減るプラスがある一方、農業や冬の商売にはマイナスが多く、その影響が野菜の値段などを通じて暮らしに返ってきます。ここからは、表の中身を1つずつ数字で確かめます。
東京の市場で取引される冬野菜6品目の値段は、暖冬の冬(12〜2月)には前後の年の同じ月の平均の約87%で、11回のうち8回で安くなっていました。寒冬の冬は約117%なので、暖冬の冬の値段は寒冬の冬の4分の3ほどの計算です。品目別では、キャベツが約78%、はくさいが約82%、だいこんが約85%と、葉物や根菜が安くなりやすくなっています。暖かいと野菜がよく育ち、出荷が前倒しになって市場に多く出回るためです。
ところが、次の春(3〜4月)は、11回のうち4回で2割以上高くなりました(2010年・2016年・2020年・2024年)。冬に早く育って出荷が進んだぶん、春に出す野菜が足りなくなることがあるからです。農林水産省は2024年3月29日、暖冬で生育・出荷が前進したあと、2月下旬以降の低温で生育が遅れ、はくさいやキャベツなどが4月前半に平年より高くなる見込みと発表していました。
野菜16品目の毎月の値段と、平年(過去5年の同じ月の平均)との比較は野菜の卸売価格ウォッチで毎月更新しています。
| 都市 | 暖冬の冬の平均 | 2019〜20年(記録的な暖冬) | 2025〜26年 | 寒冬の冬の平均 |
|---|---|---|---|---|
| 札幌 | −6% | −3% | −4% | +8% |
| 仙台 | −8% | −16% | −10% | +11% |
| 東京 | −10% | −15% | −5% | +15% |
| 名古屋 | −11% | −25% | −12% | +14% |
| 大阪 | −12% | −24% | −13% | +16% |
| 広島 | −12% | −25% | −12% | +17% |
| 福岡 | −13% | −32% | −18% | +19% |
暖房に使うエネルギーは、外が寒いほど増えます。その目安になる「暖房度日」で比べると、暖冬の冬は平年より札幌で約6%、東京で約10%、福岡で約13%少なくなっていました。札幌は暖冬でも冬の平均気温が0℃を下回るので、減り方は小さめです。記録的な暖冬だった2019〜20年の冬は、名古屋・大阪・広島で約4分の1、福岡で約3分の1も少なくなりました。
| 12〜2月に使う灯油 | 6%減(札幌の目安) | 10%減(東京の目安) | 13%減(福岡の目安) |
|---|---|---|---|
| 18L缶で10缶 | 約1,530円 | 約2,550円 | 約3,320円 |
| 18L缶で20缶 | 約3,060円 | 約5,110円 | 約6,640円 |
| 18L缶で30缶 | 約4,600円 | 約7,660円 | 約9,960円 |
たとえば12〜2月に灯油を18L缶で20缶使う家なら、暖冬の冬は札幌の目安で1缶強、東京の目安で2缶ほど少なくて済み、2026年10月5日の価格で約3,000〜5,000円の差になります。エアコンやガスの暖房も、同じくらいの割合で使う量が減ると考えられます。灯油の値段そのものは天気より原油価格などで決まるので、暖冬だから灯油が安くなるわけではありません。最新の灯油の値段は灯油価格ウォッチで毎週確かめられます。
| 都市 | 開花の平年日 | 暖冬の年 | 寒冬の年 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 5月1日 | 2.7日早い | 2.3日遅い |
| 仙台 | 4月8日 | 3.0日早い | 5.4日遅い |
| 東京 | 3月24日 | 2.2日早い | 3.0日遅い |
| 名古屋 | 3月24日 | 3.1日早い | 3.4日遅い |
| 大阪 | 3月27日 | 1.0日早い | 1.9日遅い |
| 広島 | 3月25日 | 2.9日早い | 3.1日遅い |
| 福岡 | 3月21日 | 1.0日早い | 3.6日遅い |
7都市の50年のデータでは、暖冬の年の桜は平年より平均1〜3日早く咲き、寒冬の年は2〜5日遅く咲いていました。ただし、大阪と福岡は暖冬でも1.0日しか早まっていません。桜の花芽は、冬に一定期間の寒さにさらされて眠りから目覚める「休眠打破」が必要で、冬が暖かすぎるとこの目覚めが遅れるためです(ウェザーニューズの解説)。もともと冬が暖かい西日本ほど、その影響を受けやすくなります。
2023〜24年の冬は全国的な暖冬でしたが、東京の開花は2024年3月29日と平年より5日遅く、大阪は3月30日、福岡は3月27日といずれも平年より遅れました。ウェザーニューズは2024年2月の時点で、暖冬の影響で太平洋側の一部では休眠打破が遅れている可能性があるとしていました。農林水産省によると、2月下旬以降は気温が低く、野菜の生育も遅れていました。7都市の開花日の記録は桜の開花ウォッチで確かめられます。
| シーズン | その冬 | 最大値(1週間・定点あたり) |
|---|---|---|
| 2016〜17年 | 暖冬 | 39.4人 |
| 2017〜18年 | 寒冬 | 54.3人 |
| 2018〜19年 | 暖冬 | 57.1人 |
| 2022〜23年 | 平年並 | 12.9人 |
| 2023〜24年 | 暖冬 | 33.7人 |
| 2024〜25年 | 平年並 | 64.4人 |
| 2025〜26年 | 暖冬 | 51.1人 |
暖冬だからインフルエンザが流行しない、ということはありません。当サイトのデータで暖冬だった4シーズンは、どれも流行の最大値が全国平均で警報レベルの目安(30人)を超えていました。2023〜24年と2025〜26年は暖冬でしたが、9月ごろから流行が始まり、例年より早く患者が増えました。流行の大きさは、気温よりも、その年に流行するウイルスの型や人の動きなどに左右されます。
厚生労働省は、空気が乾燥するとのどや鼻の粘膜の防御機能が落ちるとして、加湿器などで室内の湿度を50〜60%に保つことを予防策の1つに挙げています。暖冬の冬でも、ワクチン・手洗い・換気・加湿といった対策は例年どおり続けるのが安心です。全国と47都道府県の毎週の患者数はインフルエンザ流行ウォッチで見られます。
| 分野 | 起きること | 出典 |
|---|---|---|
| 果樹・ハウス野菜 | 生育や病害虫の発生が早まる。果樹は芽が早く出て、花の時期に霜の害を受けやすくなる。ハウスでは害虫の出始めが早くなる | 長野県(2024年2月) |
| 田んぼの水 | 雪が少ないと、春先に雪どけ水に頼る地域で農業用水が足りなくなるおそれ | 長野県(2024年2月) |
| お店 | 冬物衣料や暖房器具の売れ行きが不調。暖冬は冬ならではの消費にマイナス | 内閣府(2020年4月) |
| スキー場 | 雪不足で営業日が減る。2019〜20年は北・東日本の日本海側の降雪量が統計開始以来最少 | 気象庁 |
長野県は、暖冬だった2024年2月、農作物の生育や病害虫の発生が早まるとして、作業を早めに進めるよう呼びかけました。果樹は芽が出るのが早まると、花が咲く時期に遅い霜にあたって被害を受けやすくなります。トマトやキュウリなどのハウス栽培でも、アブラムシなどの害虫が早く出てくるため、早めの対策が必要とされています。イチゴについて暖冬の影響をまとめた公的な数字は見当たりませんが、同じハウス栽培の作物として、生育や害虫の動きが早まることに注意が必要です。
サガテレビ ニュース「”暖冬”で“野菜が育ちすぎ? 観測史上2番目の平均気温で佐賀の農業に影響が…【佐賀県】 (24/03/07 18:40)」(2024年3月公開)。暖冬で野菜が育ちすぎるなど、佐賀県の農業への影響を伝えるニュースです。
お店への影響では、内閣府が2019〜20年の記録的な暖冬について、冬物衣料の売れ行きの低迷など、暖冬が冬ならではの消費にマイナスの影響を与えたと分析しています。景気ウォッチャー調査では、家電量販店から暖房器具が売れないという声が12月と1月を通して聞かれ、スーパーからは鍋物の不調や、野菜の相場安で売上が伸びないという声もありました。スキー場の雪不足は、暖冬なのに大雪になるのはなぜ?で冬ごとの降雪量とあわせてまとめています。
A. いります。暖冬は12〜2月の3か月の平均で決まるので、寒い日がなくなるわけではありません。全国的に暖冬だった2025〜26年の冬も、1月下旬〜2月上旬には強い寒気が南下して低温になったと気象庁はまとめています。冬物は、出番が少なくても用意しておくと安心です。
A. 暖房費は減りやすく、冬の野菜も安くなりやすいので、冬の間はプラスになりやすいと言えます。ただ、春に野菜が値上がりする年があり、雪不足で地元の観光や農業が打撃を受ける地域もあります。暮らす地域や仕事によって、得か損かは変わります。
A. 雪が少ない冬は、春に山から流れてくる雪どけ水が減ります。長野県は2024年2月、雪どけ水に頼る地域では、春の農作業が本格化する前に農業用水の使い方を地域で話し合うよう呼びかけました。水不足になるかどうかは、春以降の雨の量にも左右されます。
A. 気象庁が2026年9月18日に発表した寒候期予報では、2026年12月〜2027年2月の平均気温は東日本と西日本で「高い」確率が60%です。予報の中身や過去の暖冬の年は暖冬だった年はいつ?過去50年の8都市ランキングにまとめています。
野菜・灯油・桜・インフルエンザのデータは、それぞれのデータページで毎日〜毎月自動で更新しています。暖冬の冬こそ、野菜の値段の動きと春先の天気をこまめに確かめておくと、家計の備えに役立ちます。
この記事の情報は2026年10月10日時点のものです。主な出典: 東京都中央卸売市場「市場統計情報」、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2026年10月5日調査)、気象庁の日別の気象データと生物季節観測、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構「感染症発生動向調査」(いずれも当サイトで集計)、農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し」(2024年3月29日)、長野県「暖冬の影響に対する今後の農作物の栽培管理について」(2024年2月2日)、内閣府「今週の指標 No.1236」(2020年4月10日)、厚生労働省「インフルエンザQ&A」、ウェザーニューズ「第二回桜開花予想」(2024年2月1日)、気象庁「寒候期予報」(2026年9月18日)。当サイトの平均気温は日最高と日最低の平均で計算しています。価格や天候の予想、購入や医療の判断をすすめるものではありません。気になる症状があるときは医療機関に相談してください。