灯油の容器やレシートには、食品のような使用期限は書かれていません。ただし、NITE(製品評価技術基盤機構)やメーカーは、灯油はそのシーズン中に使い切るよう案内しています。前の冬から持ち越した灯油は、見た目に変化がなくても使わないのが安全です。この記事では、公的機関とメーカーの案内をもとに、古い灯油を使うとどうなるか、見分け方、処分の仕方をまとめました。当サイトの気象データから、8都市で暖房がいらなくなる時期も計算しています。
| 出している機関 | 案内の内容(要約) |
|---|---|
| NITE (製品評価技術基盤機構) | 灯油は長期保管などで変質することがある。色の着いていない変質灯油もあり見分けにくいので、使用中の灯油はそのシーズン中に使い切る |
| シャープ (石油暖房機のメーカー) | 1シーズン以上保管した灯油(変質灯油)は使わない。特に前年から持ち越した灯油や、高温多湿・直射日光の場所に置いた灯油に注意 |
| 千葉市消費生活センター | 前のシーズンから持ち越した灯油の使用は避ける。不良灯油が原因の故障は、保証期間内でも有償修理になる場合がある |
| 鹿児島市消費生活センター | 前のシーズンの灯油は変質していることがあり、不完全燃焼や機器の不具合を起こすことがある |
灯油には、「何か月まで使える」という決まった期限はありません。そのかわり、公的機関やメーカーは「そのシーズン中に使い切る」「1シーズン以上保管した灯油は使わない」という言い方で、使える期間を示しています。秋から冬に買った灯油は、その冬のうちに使い切るのが目安です。
灯油は食べ物のように腐るわけではありません。ただし、長く置いておくと性質が変わる「変質」が起きます。NITEは、長期保管や日光の影響で灯油が変質することがあるとしています。灯油を入れるポリタンクそのものも、紫外線で傷んでいきます。
| 種類 | どんな灯油か | 使うと起きること |
|---|---|---|
| 変質灯油 | 長期保管などで性質が変わった灯油(前の冬から持ち越した灯油など) | しん式ストーブの芯にタールがつき、芯が下がらず火が消えなくなることがある。強いにおい、異常燃焼、故障 |
| 不純灯油 | 水やごみ、ほかの油(ガソリン・軽油など)が混ざった灯油 | 異常燃焼や故障。ガソリンが混ざると火災の原因になる |
前の冬から持ち越した1年前の灯油は、使わないほうが安全です。NITEによると、変質灯油を芯で燃やすタイプの石油ストーブに使うと、芯に固まりがつき、芯が下がらなくなって火を消せなくなることがあります。この状態でストーブが倒れると、倒れたときに火を消す装置が働いても燃え続けるおそれがあります。
NITE official「【事故再現】 石油ストーブ「10.変質灯油で異常燃焼のおそれ」」(2017年10月公開)。変質した灯油を芯で燃やすタイプの石油ストーブに使ったときの異常燃焼の再現です。
ファンヒーターでも、シャープは変質灯油を使うと強いにおいや異常燃焼、故障の原因になるとしています。千葉市消費生活センターは、不良灯油による故障は保証期間内でも有料の修理になる場合があると注意しています。
千葉市消費生活センターには、前のシーズンから持ち越した灯油を石油ストーブで使ったところ、消火のつまみが動かなくなり、ひどいにおいもしたという相談が寄せられました。メーカーが点検すると、芯にタールがついて動きにくくなっていました。タールを取り除き、中の灯油をすべて新しいものに入れ替えると、問題なく使えるようになったそうです。
2年前の灯油は、1年前の灯油よりさらに長く保管された灯油です。シャープの案内では「1シーズン以上保管した灯油」は使わないとしており、2年前の灯油もこれにあてはまります。使わずに、この記事の「余った灯油の処分方法」にそって処分してください。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 透明なガラスのコップに水を入れ、その上から灯油を少し入れる(火の気のない場所で) |
| 2 | コップの後ろに白い紙をあてて、水と分かれた灯油の色を見る |
| 3 | うす黄色など、少しでも色がついていたら変質灯油。良い灯油は無色透明 |
灯油が変質しているかは、色で確かめられることがあります。良い灯油は無色透明ですが、変質した灯油はうす黄色に見えます。白い紙を後ろにあてると、色の違いが分かりやすくなります。
福島ニュース [福テレ]「薄黄色やすっぱい臭い…変質灯油は使わないで 暖房機器使用前にご用心 自己判断せず1シーズン使い切りを (22/10/18 19:25)」(2022年10月公開)。変質灯油の色やにおいの変化と、1シーズンで使い切るよう呼びかけるニュースです。
ただし、色が着いていない変質灯油もあります(NITE)。透明だったからといって、持ち越した灯油が安全とは言い切れません。見分け方は「使ってはいけない灯油を見つける」ためのもので、「使ってよい灯油を確かめる」方法ではないと考えてください。なお、ガソリンはうすいピンク色です(シャープ)。色の着いた油は暖房器具に入れないでください。
灯油を持ち越さないいちばんの方法は、春に余らせないことです。当サイトは気象庁の8都市の観測データをためています。そこで、1日の平均気温が10℃を下回った最後の日を「暖房がほしい寒さの最後」として、2017〜2026年の10年で調べました。
10年の平均で、福岡は3月20日ごろ、名古屋・大阪・広島・東京は3月下旬、仙台は4月26日ごろ、札幌は5月15日ごろでした。ただし年によって大きくずれます。東京では、早い年は2021年3月11日、遅い年は2020年4月20日で、40日ほどの差がありました。那覇は10年とも、平均気温が10℃を下回る日はありませんでした。
| 都市 | 真夏日(30℃以上) | 猛暑日(35℃以上) | 猛暑日の平年並み(2016〜2025年の平均) |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 14日 | 0日 | 0.8日 |
| 仙台 | 25日 | 3日 | 3.7日 |
| 東京 | 57日 | 12日 | 13.0日 |
| 名古屋 | 82日 | 29日 | 24.7日 |
| 大阪 | 76日 | 34日 | 25.1日 |
| 広島 | 75日 | 34日 | 16.5日 |
| 福岡 | 73日 | 38日 | 18.4日 |
| 那覇 | 98日 | 0日 | 1.0日 |
春に残った灯油は、そのあと夏を越すことになります。2026年の夏は、福岡で猛暑日が38日、大阪と広島で34日と、2016〜2025年の平均の1.4〜2倍ほどありました。シャープは高温多湿の場所に置いた灯油に注意するよう呼びかけています。暑い夏を越した灯油は、とくに使わないほうがよいでしょう。
余った灯油は、買ったガソリンスタンドや石油販売店に相談するのが基本です。引き取りの対応や費用は店によって違うため、持ち込む前に問い合わせてください。灯油は全国平均で1Lあたり約141円(2026年9月28日調査)なので、5L余れば約705円、10Lなら約1,410円分です。
福島ニュース [福テレ]「古い灯油 処分は購入した販売店に依頼 暖房を使うこれからの時期 安全に使用を (22/10/18 19:30)」(2022年10月公開)。古い灯油は自分で捨てず、買った販売店に処分を頼むよう伝えるニュースです。
金額としてはもったいなく感じますが、変質灯油でストーブが故障すると、保証期間内でも有料の修理になる場合があります。春は「足りなくなったら少し買い足す」くらいの量で回すのが、結局は無駄が少なくなります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 容器 | 灯油専用のポリタンクを使い、ふたをしっかり締める |
| 場所 | 日光の影響を避けるため、必ず暗い場所に置く |
| 容器の替えどき | 色あせやひび割れがあるポリタンクは買い替える(日本ポリエチレンブロー製品工業会は、製造後5年を過ぎたポリタンクの取り替えをすすめている) |
シーズン中に灯油を置いておくときも、この3つを守ると変質しにくくなります。ポリタンクは紫外線で傷み、傷んだ容器では灯油が変質したり容器が割れたりするおそれがあります(NITE)。保管していても、持ち越した灯油は次のシーズンには使わないのが原則です。
A. 公的機関やメーカーは「何か月」という期間は示していません。NITEは使っている灯油はそのシーズン中に使い切るよう、シャープは1シーズン以上保管した灯油は使わないよう案内しています。秋冬に買った灯油はその冬のうちに、が目安です。
A. おすすめできません。NITEは、色の着いていない変質灯油もあり、見分けるのは難しいとしています。透明でも、前のシーズンの灯油は使わないのが安全です。
A. 混ぜても、変質した灯油が入っていることに変わりはありません。メーカーは変質灯油を使わないよう案内しているので、混ぜずに処分してください。
A. シーズンが終わったら、機器の中の灯油を抜いておくのが基本です(千葉市消費生活センター)。抜き方は機種の取扱説明書に従ってください。抜いた灯油も持ち越さず、販売店などに相談して処分します。
A. においが強い、火が消えにくい、炎の様子がおかしいといった異常を感じたら、すぐに使うのをやめてください。千葉市消費生活センターは、異常を感じたら使用を中止し、販売店やメーカーに連絡するよう助言しています。
1缶で何日もつかは灯油18リットルは何日もつ?、灯油の最新の値段は灯油価格ウォッチで確かめられます。
この記事の情報は2026年10月2日時点のものです。主な出典: NITE(製品評価技術基盤機構)「灯油の保管と石油ストーブのしまい方について(事故防止)」、シャープ「安全な使い方アドバイス(石油暖房機)」、千葉市「消費者被害注意報 No.68」、鹿児島市「ABC消費者情報 Vol.46」、気象庁「過去の気象データ」、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」。機器の扱い方は、お使いの機種の取扱説明書とメーカーの案内を優先してください。